
丸い金属の面に、
女性の姿が静かに刻まれている。
これは絵ではありません。
金属そのものを彫り、陰影をつくり、
光によって像を浮かび上がらせる ―― それが彫金です。
彫金コンパクトは、昭和期を中心に制作された装飾工芸のひとつです。
金属板に細かな線を刻み、金色や黒の着色を重ね、
平面の中に奥行きを生み出します。
角度を変えると、
髪の流れが柔らかく立ち上がり、
扇や装身具が静かに光を返す。
印刷でも、七宝でも、蒔絵でもない。
金属を直接彫ることで生まれる表情があります。

彫金コンパクトには、
・美人画
・花鳥
・風景
・和装女性
・抽象的な装飾模様
など、数多くのバリエーションが存在します。
同じ技法であっても、
線の太さ、彫りの深さ、着色の強弱によって印象はまったく異なります。
ジュエヌ別室では、
複数の彫金コンパクトを所蔵しています。
今後は一点ずつ、
それぞれの線の質や構図の違いを観察していきます。
彫金という技法が、
なぜコンパクトという小さな円の中に選ばれたのか。
その理由も、少しずつ紐解いていきたいと思います。

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