
七宝という技法は、
金属の上にガラス質の釉薬を重ね、焼き、
また重ねて焼くことで生まれる。
けれど実物を見ると、
それは技法というより「光の層」だと感じる。

このコンパクトは、
濃い青緑の地の上に、
立体的に浮かび上がる百合。
縁取りの金線は輪郭を保ちながら、
表面はやわらかく丸みを帯びている。
焼成によってガラスが溶け、
角が自然に落ちた証。
七宝は平面的になりがちだが、
この個体は奥行きがある。
釉薬の流れ、下地の揺らぎ、
光の当たり方で印象が変わる。

内部には「CLOVER」の刻印。
当時の商標をきちんと入れているところに、
量産であっても誇りを持った時代性が見える。

昭和中期、
七宝は贈答品や輸出品として
高い評価を受けていた。
けれど、このコンパクトは
その華やぎよりも、
手の中で静かに光る質感が印象に残る。
金属とガラス。
硬質な素材同士が、
なぜかやわらかく見える。
それが七宝の魅力だと思う。
コメントを残す