Vintage Nishijin compact by ELEGANT TOKYO, circa 1975–1990, with vermilion silk and woven maple leaf patterns.

箱を開けると、まず赤が立ち上がる。

西陣織はもともと帯地として発達したものだが、

この小さな円の中では、織りの密度がよりはっきりと現れる。

帯のように身体に沿うのではなく、

直径七センチの平面に切り取られる。

そのことで、図案の配置や金糸の入り方が、ひとつの画面として意識される。

金糸は光を強く返すのではなく、

少し沈む。

織りの凹凸がそれを受け止めている。

赤は華やかだが、織物特有の奥行きがあるため、

単なる色面にはならない。

円形という制限の中で、

紅葉は広がりすぎず、余白を残して収まる。

帯であれば流れていく図案が、ここでは凝縮される。

織物は本来、面でありながら身体性を持つ。

それが金属の蓋の上に置かれると、

純粋な“装飾面”になる。

その変化が、この作品の面白さだと思う。

小さいからこそ、

織りの整い方がはっきりと見える。

華やかさの中にある、秩序。

長く見ていると、

赤よりも、その整い方のほうが印象に残る。